コラム

運動による予防・改善効果~認知症

2019年6月19日
提供元:
NPO法人EBH推進協議会
株式会社ライフケアパートナーズ
知的機能の低下が、生理的な老化の範囲をはるかに超えた障がい「認知症」には、アルツハイマー病と脳血管認知症の大きく二つの型があります。
アルツハイマー病は初老期の病的な脳の老化で、脳が小さくなっていき、数年を経て死亡する病気です。大量の神経細胞が細胞死を起こした結果なのです。アルツハイマー病ではさまざまな部位が侵されていきます。
この病変の拡大にともない、自分の病気に対する認識を失い、自発性も低下し、最終的にはいわゆる『恍惚の人』となることになります。
一方、脳卒中の発作後に認知症が出現することがありますが、これが典型的な脳血管認知症と言ってよいでしょう。
動脈硬化で脳血管の内腔が狭くなり、そこが血栓で詰まるのが脳梗塞で、脳卒中の中で一番多いものです。
詰まった血管の先には血液が供給されなくなり、脳細胞が死滅すると、認知症の症状が起こります。脳梗塞、特に小さい脳梗塞が多くできると、認知症が非常に出現しやすくなります。

つまり、脳の動脈硬化は、脳血管認知症の出現に大きな役割を果たしていることが分かります。
脳血管認知症の多くは、脳卒中や小さな多発性の脳梗塞によるものであり、このような脳血管障がいを予防することが、脳血管認知症の予防上、最も確実な方法であると考えられます。
具体的には、脳血管障がいの代表的なリスクである高血圧症と脂質異常症にならないような生活(食習慣、運動習慣)を保つことが認知症を予防する上でも意義は極めて大きいといえます。

脳生理学的には、運動は、脳の運動系と感覚系の神経細胞の両方を使った活動であり、その点では感覚系だけしか使わない読書やテレビ観賞などに比べて、より広範に脳の部位を機能させることになるわけです。
酸素を取り入れて脂肪や糖質を燃やしながら運動する「有酸素運動」の代表であるエアロビック・ダンスは、音楽に合わせ、複雑な動きのバリエーションとともに、多種多様な筋肉の動きで呼吸器・循環器系や脳・神経系を駆使するので、認知症予防には最も適した運動の一つです。

このように、習慣的な運動の継続は、脳血管認知症の原因となる脳の動脈硬化のリスク(高血圧症と脂質異常症)に対して有効な防御手段であるばかりでなく、運動動作に伴う脳代謝の上昇や、脳の血流や神経伝達物質の分泌の増加などによって、脳の老化を防ぐ可能性が十分期待されるのです。

高齢者の精神保健にとっても、有酸素運動は意義があると思われます。