コラム

運動処方箋~運動持続時間

2018年6月6日
提供元:
運動生理学 森谷 敏夫 (京都大学名誉教授、京都産業大学・中京大学客員教授)
運動処方箋~運動持続時間
はっきりとした運動効果を得るための持続時間は、最低15分といわれています。
運動の予防医学的な効果を最大に得るためには、30分(~最大60分程度)の運動の継続が望ましいとされています。
それは、運動の開始初期では、呼吸器や循環器の動きが必要なレベルにまで達していないので、十分な酸素が筋肉に運べず、筋肉は酸素不足でエネルギーをつくるからです。
その後、酸素が十分に筋肉に運ばれ始めると、脂肪や糖質がほぼ半分ずつの割合で燃やされだします。
平均的な人の血液の中には、ブドウ糖で80キロカロリー、遊離脂肪酸で4キロカロリー、中性脂肪で40キロカロリーの、合計124キロカロリーの燃料がプールされています。
また、カラダ組織内の中性脂肪には14万キロカロリー、タンパク質(主に筋肉)で4万キロカロリー、肝臓と筋肉のグリコーゲンで1900キロカロリーの燃料が貯蔵されています。
運動をすると、まず血液の中にプールされた124キロカロリーが燃やされます。このエネルギーが無くなってくると、カラダに貯えられている莫大な貯蔵燃料が20~30分後に利用され始めます。
しかしながら、中高年で、肥満で、運動不足の人が30分間も与えられた運動強度を維持することは難しいので、漸増的負荷法に基づいて、徐々に運動の質と量を向上させていくことが大切です。
中高年(40~57歳)の男性を対象にした実験では、週4回の40分の歩行運動と、週3回の30分のジョギングの効果を比較したところ、両者の運動はエネルギー消費量においてほぼ同じくらいで、呼吸器・循環器機能へのトレーニング効果もほぼ同等であったと報告されています。
ということは、運動にかかる時間は異なりますが、何も無理してジョッギングをする必要はなく、歩行運動で十分なのです。