コラム

口腔と糖尿病の深い関わり

2019年10月28日
提供元:
NPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会、株式会社ライフケアパートナーズ
歯の健康と男性

今回は、歯科の視点からの糖尿病についてお話します。

歯周病と糖尿病は相互に影響を与えていると言われています1, 2)。糖尿病の方は歯周病にも罹(かか)りやすく、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するとも言われています。歯科医院での歯石除去などの歯周病治療で炎症が改善すると、糖尿病も改善することが分かってきています。

 

歯周病の何が悪いの?

歯の周囲の炎症が進行すると、歯と歯肉の間にある溝が深くなって歯周ポケット3)が形成されます。5mm程度の歯周ポケットが全ての歯(28本)にあると、歯周ポケット表面積の合計は手のひらと同じ程度(約72㎠)になると考えられています4)。体の中で、手のひらサイズの病巣で常に炎症が起こっていることは、なかなか大きな問題だということがイメージできますよね。歯周ポケットで炎症に関する物質がつくられ、血管から全身を巡り、血糖値を下げるインスリンを効きにくくして、糖尿病が進行しやすくなります。

 

口腔清掃の重要性

歯周ポケットが深くなる原因は、歯の表面に付着している口腔細菌の塊である歯垢(しこう)です。歯垢は水や洗口剤(せんこうざい)などで口をすすぐだけでは除去できないため、歯磨きで除去する必要があります。また、歯科医院での定期的な歯石除去も大切です5)

 

糖尿病で口腔内が乾燥することも

そしてもう一つ、口腔と糖尿病の関わりとして、糖尿病に罹ると、口腔内が乾燥する症状が出ることがあります。高血糖による脱水傾向のために唾液の量が減ることが原因と言われています2)。歯周病菌を抑制し洗い流す役割を持つ唾液の量が減ると、菌が増えて歯周病が悪化する恐れもあります。まさに負の連鎖ですね。

 

生活習慣の見直しを

歯周病も、糖尿病も、ともに生活習慣病です。毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、日々の歯磨きや定期的な歯科受診で歯周病を予防することは、糖尿病を予防・改善することにも繋がります。

 

 

参考文献:

  • 日本歯周病学会編 糖尿病患者に対する糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン, 2014. P.13

http://www.perio.jp/publication/guideline.shtml

 

2) 日本糖尿病学会編 糖尿病診療ガイドライン2016.

http://www.jds.or.jp/modules/publication/?content_id=4

13.糖尿病と歯周病P.2

 

3) 日本歯周病学会HP 歯周病Q&A. http://www.perio.jp/qa/symptom/

 

4)  Page et al. Ann Periodontol, 3:108-120, 1998.

国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス(105)歯周病と循環器病

http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph105.html

※歯周ポケットのイメージ図および、手のひらサイズのイメージ図もこちらのHPに載っております。(図5 歯周病でできる潰瘍)

 

5) 日本歯周病学会編 歯周治療の指針2015.

http://www.perio.jp/publication/guideline.shtml

8.歯周治療 P.36