コラム

メタボ健診開始から10年

2019年8月26日
提供元:
NPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会、株式会社ライフケアパートナーズ
ウエストを図るメジャーが乗っている体重計

特定健康診査(特定健診、いわゆるメタボ(メタボリックシンドローム)健診)は、日本人の死因の約6割を占める生活習慣病やがん等の予防を目指し、40~74歳までの人を対象に2008年度からスタートしました。
それまでの健康診断は、生活習慣病やがん等の早期発見・早期治療に重きが置かれていました。ところが、健康診断後の事後指導や健康教室には健康意識の高い人や女性は多く参加していますが、メタボ該当者や予備群の男性は「仕事が忙しい」「仕事が優先」などを理由に、保健指導をあまり受けていませんでした。

 

改めてメタボリックシンドロームについて説明をすると、内臓脂肪が異常に蓄積して、血糖、血圧、脂質に異常をきたす症候群で、糖尿病や心筋梗塞などの心血管疾患になるリスクを高めます。メタボ健診では、保健指導の対象となるかどうかを判断し、必要度に応じて保健指導(積極的支援、動機付け支援)をしています。健診では内臓脂肪を測定することができないので、内臓脂肪の面積と相関する腹囲の計測が、健診項目として新たに加わりました(内臓脂肪面積100㎠≒腹囲85cm(男性)、90cm(女性))。ところが、日本と海外とのメタボの基準が異なることから「女性よりも男性の方が腹囲の基準値が厳しいのはおかしい」という人もいました。また、中には「肥満=メタボ」と勘違いしている人もいました。

 

第1期(2008年度~2012年度)の頃は、メタボの改善・予防の保健指導も手探りでした。保健指導の効果をみると、指導を受けなかった人(0.42㎏減)に比べ、積極的支援を受けた人(1.98㎏減)の方が1年後の体重減少は大きかったのです。2㎏弱の減少はたいしたことはないのでは、と思う人もいるかもしれませんが、肥満体重の3%程度(60㎏の人なら1.8㎏)の減量でも、血糖・血圧・脂質異常の改善が認められています。つまり、2㎏程度の減量を維持することが大切なのです。

 

第2期(2013年度~2017年度)の特定健診では、透析予防など重症化予防の視点が加わりました。2015年度の特定健診の実施率は50.1%(約2,706万人)。その中で特定保健指導の対象になったのが約453万人。しかし、その中で特定保健指導ができたのは2割以下に過ぎません(約79万人)。残りの8割以上の人は特定保健指導ができていません。
このように、メタボ健診についての認知度は10年前と比べるとかなり高まっているのですが、改善・予防への対策は、まだまだできていないと言えるでしょう。

 

2018年度から第3期(~2023年度)の特定健診が始まり、運用面の改善が行われました。健診受診後に初回の面接ができたり、ICTを用いた遠隔医療の活用などが考えられています。また、レセプト情報と特定健診等情報を突合したデータベース化もされており、ビッグデータの解析もできるようになりました。
この新しい特定健診や特定保健指導を、積極的に受けてみるようにしてはいかがでしょう。