コラム

上腹部と大腸の内視鏡検査について

2019年6月19日
提供元:
NPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会 株式会社ライフケアパートナーズ
検査などで、上腹部または大腸の内視鏡検査を経験されたことはおありでしょうか?
胃や腸など腸管の中をみるのに、内視鏡が多く用いられます。
初めて胃の中をみようとしたのはドイツの医師クスマウルで、1868年にまっすぐな剣を飲み込む技を披露していた大道芸人に長さ47センチ、直径13ミリの金属管を使いました。
その後、日本をはじめとして胃カメラの開発が本格化したのが1950年代。
現在では、口からだけでなく鼻から入れられるくらいに細くなりました。

上部消化管内視鏡検査では、腹痛、食欲低下、貧血などの原因を調べる、あるいは、食道・胃・十二指腸にできた潰瘍(かいよう)、腫瘍(しゅよう)などをみつけるために行います。
その際に、胃などの組織をとることがあります(生検)。
経口内視鏡(口から入れる内視鏡)に比べて、経鼻内視鏡(鼻から入れる内視鏡)は挿入時のつらさが少ないのが特徴です。
また、口から入れていないので、検査中に会話することも可能です。
ただし、どちらのやり方でも胃などの組織の採取はできるのですが、経鼻内視鏡では大きな病巣などの切除はできません。
一方、経口内視鏡ではある程度可能ですが、限界もあります。

肛門から内視鏡を挿入する下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)では、大腸、小腸の一部、痔核などの観察ができます。
「大腸にポリープがあります」と言われて、がんではないかと心配された方がいるかもしれません。
ポリープとは、内視鏡検査でみつかる隆起性病変のことですが、腫瘍(良性、悪性)と腫瘍以外のポリープがあります(炎症性、過形成)。
炎症性のポリープは潰瘍性大腸炎などの炎症性の病気の際に発生します。
過形成ポリープは老化現象のひとつです。
ちなみに、2018年のイグノーベル賞は「座位で行う大腸内視鏡検査-自ら試してわかった教訓」(医学教育賞)で、医師自らが座ったままで内視鏡を操作して検査する方法を編み出した堀内朗先生が受賞しています。
下部消化管内視鏡の検査は痛くて嫌だという人がいますが、苦痛の少ない方法がいろいろ開発されています。
大腸がん検診で便潜血(べんせんけつ)に陽性が指摘された人は、必ず内視鏡検査を受けるようお勧めします。